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2003年に出た本をご案内いたします





◆1『権利論』〔増補版〕2月3日上梓
◆2『顧問官の政治学』2月28日上梓 書評が載りました(『週刊読書人』5月16日)評者=菊池理夫氏。書評が載りました(『史学雑誌』第114編第10号)評者=小泉 徹氏(05年11月8日更新)
◆3『ユーロとイギリス』5月上旬上梓 書評が載りました(『週刊読書人8月22日)評者=斎藤俊明氏,『史学雑誌』113編第1号,平成16年1月,評者=見市雅俊氏
◆4〔アメリカ・ビジネス法12〕『国際商取引法』6月30日上梓
◆5〔アメリカ・ビジネス法13〕『民事訴訟手続』8月6日上梓
◆6『フーコーの穴:統計学と統治の現在』9月10日上梓 書評が載りました(『週刊読書人』11月7日)評者=金森 修氏, 紹介記事掲載『出版ニュース』11月中旬号,『週刊読書人2003年の収穫』12月19日小松美彦氏,『図書新聞2003年下半期読書アンケート』12月27日川本隆史氏,酒井隆史氏,関連記事掲載『朝日新聞』「ようこそ」2004年07月07日夕刊,「政治研究櫻田会学術奨励賞」受賞 本書より06年東大経済(文II)の後期論文IIの第一問が出題
◆7『地域文化と人間』4月15日上梓
◆8『英国の立憲君主政』6月2日上梓 書評が載りました(『神社新報』8月25日)評者=川田敬一氏
◆9『各国の選挙―変遷と実状―』9月10日上梓 書評が載りました(『読売新聞』11月9日評者=橋本五郎〔同紙編集委員〕氏,『公明新聞』12月1日)
◆10『議会制度と日本政治――議事運営の計量政治学』9月24日上梓
◆11『理論とテクノロジーに裏付けられた新しい選挙制度』10月2日上梓 紹介記事掲載(『経済セミナー』587号2003年12月)書評が載りました(『週刊ダイヤモンド』2004年1月10日号,評者=北村行伸一橋大学経済研究所教授)
◆12『国民主権と民族自決―第一次大戦中の言説の変化とフランス―』10月30日上梓 書評が載りました『図書新聞』3月27日付,評者=森本哲郎氏,書評が載りました『史学雑誌』第114編第11号 評者=中本真生子氏(05-12-09更新)
◆13『将軍ワシントン―アメリカにおけるシヴィリアン・コントロールの伝統』10月30日上梓 紹介記事掲載『出版ニュース』2004年1月上・中旬合併号,書評が載りました『図書新聞』3月20日付,評者=松崎博氏 書評が載りました『史学雑誌』115編第2号,評者=久田由佳子氏
◆14『近代化と国民統合―イギリス政治の伝統と改革―』12月20日上梓 書評が載りました『週刊読書人』3月26日付,評者=松園 伸氏,『図書新聞』6月05日付,評者=添谷育志氏




◆権利論〔増補版〕

  • 権利論〔増補版〕
  • Taking Right Seriously, 2001 by Ronald Dworkin
  • A5判・400頁・定価:本体4000円+税
    ISBN4-8332-2326-0 C3032
  • 2003年2月3日発行
  • 小林公・木下毅・野坂泰司訳
  • ロナルド・ドゥウォーキン著
  • 『平等とは何か』木鐸社,2002年
  • 『法の帝国』未来社,1995年
  • 『ライフズ・ドミニオン・中絶と尊厳死そして個人の自由』信山社,1998年
  • 『自由の法』木鐸社,1999年
 T・Uルールのモデル V難解な事案 W憲法上の事案 X正義と権利 Y権利の尊重 Z市民的不服従 [逆差別 エピローグ  正義,市民的不服従,人種差別などを論じながら,功利主義に対し「平等な尊重と配慮」を受ける自然権の優位を主張する。三羽烏のうちロールズ,ノージック亡きあと,独り気を吐いている。このたび序・序章を加え,『権利論』U(小社刊)と併せ,原著が完訳する。現代法哲学の代表的名著の一つ。


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◆顧問官の政治学
  • 顧問官の政治学
  • 木村俊道著
  • 1970年埼玉県生れ
  • 1992年東京都立大学法学部卒業
  • 同大学院社会科学研究科博士課程退学
  • 1998-2000年同大学法学部助手
  • 政治学博士
  • 九州大学大学院法学院助教授
  • A5判・308頁5000円
  • 2003年2月25日刊行
  • ISBN4-8332-2333-3 C3023
■F・ベイコンとルネサンス期イングランド
 「世界は舞台」(シェークスピア)と信じかつ実践したフランシス・ベイコンはニッコロ・マキアベッリを倣い,ジェイムズ一世治世下で活躍した。「顧問官」という政治的アクターとしての経歴に独自に着目して「フランシス・ベイコン政治学」の思想史的意義を動態的に解明し,併せて伝統的な「近代」理解や「政治」論の歴史的再考を促す。70年代以降の英ケンブリッジを震源とする新たな思想史方法論や政治的人文主義・古来の国制論など,欧米における最先端の研究を踏まえ,従来のベイコン像を一新する。

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◆ユーロとイギリス
  • ユーロとイギリス
  • 力久昌幸著
  • 1963年福岡県生れ
  • 1987年京都大学法学部卒業
  • 1993年シェフィールド大学M.Phil.
  • 1994年京大大学院博士後期課程研究指導認定退学
  • 1996年法学博士
  • 現在 同志社大学法学部教授
  • A5判369頁6000円+税
  • ISBN4-8332-2336-8 C3022
  • 2003年5月上旬刊行
■欧州通貨統合をめぐる二大政党の政治戦略
「イギリスはユーロに参加するか」に答えるため,本書はダイナミック歴史的制度論アプローチをとる。政党指導部の戦略とイデオロギーを横軸に国民国家‐EU‐地域という多層ガバァナンスにおける権限移譲拡散の流れを縦軸に,両軸が交差する点に焦点を当て検証し,展望を加える。
目次
序章 本書の課題と分析枠組
(1)イギリスのユーロ参加問題
(2)歴史的制度論アプローチ
(3)EU加盟国の政治制度のあり方と欧州統合への態度
(4)政治戦略と政治制度
(5)多層ガヴァナンス
(6)本書の構成
第1章 欧州通貨統合の実現へ向けた歩み
(1)為替相場の安定を求める動き
(2)単一通貨導入へ向けた努力
(3)ユーロ誕生
第2章 欧州通貨統合と保守党政権
(1)ヨーロッパの党
(2)サッチャー政権
(3)メージャー政権とマーストリヒト会議
(4)ERM脱落とマーストリヒト条約批准プロセス
(5)欧州通貨統合脱争点化の画策
(6)1995年保守党党首選挙
(7)通貨統合をめぐる党内対立の激化
(8)1997年選挙惨敗
第3章 欧州通貨統合と野党労働党
(1)欧州統合に対する消極的立場
(2)ERM参加反対論
(3)ERM参加賛成論への転換
(4)欧州通貨統合に関する積極的立場
(5)欧州統合へのコミットメントとマーストリヒト条約批准プロセス
(6)政権奪回への道
(7)労働党欧州統合懐疑派
(8)1997年選挙における地滑り的勝利
(9)“Wait and See”
第4章 集権主義戦略−保守党政権による憲政改革への抵抗−
(1)イギリスの集権的制度編成
(2)小さな政府と集権主義戦略
(3)スコットランドとウェールズに対する権限移譲の拒絶
(4)サッチャリズムの洗礼
(5)欧州通貨統合と集権主義戦略
第5章 分権主義戦略−ニュー・レイバーと憲政改革−
(1)集権的制度編成へのコミットメント
(2)スコットランドとウェールズに対する権限移譲問題の浮上
(3)政策見直しと権限移譲への積極的立場
(4)ニュー・レイバー解釈
(5)新しい社会民主主義
(6)分権主義戦略の背景
(7)欧州通貨統合と分権主義戦略
第6章 ユーロ参加と労働党政権
(1)政権交代による関係改善とアムステルダム条約
(2)ユーロ参加の先送り
(3)5つの経済的基準
(4)国内政治状況
(5)議長国就任とユーロ導入をめぐる影響力の周縁化
(6)1999年欧州議会選挙
(7)ユーロ導入に向けた全国移行計画
(8)「ヨーロッパの中のイギリス」
(9)ユーロ参加をめぐる戦術的対立
(10)2001年選挙と労働党政権の再選
第7章 ユーロ参加と野党保守党
(1)1997年総選挙惨敗のショック
(2)1997年保守党党首選挙
(3)2議会期にわたるユーロ参加の否定
(4)親ユーロ保守党とUK独立党
(5)1999年欧州議会選挙
(6)『常識革命』
(7)「ポンドを維持しよう」キャンペーン
(8)2001年選挙における再度の惨敗
第8章 分権主義戦略の実施−権限移譲と労働党政権−
(1)スコットランドとウェールズに対する権限移譲の準備
(2)スコットランドとウェールズにおける住民投票
(3)権限移譲法案
(4)スコットランド議会選挙とウェールズ議会選挙
(5)北アイルランド紛争と労働党
(6)ベルファスト合意
(7)北アイルランド住民投票と議会選挙
(8)イングランド諸地域に対する権限移譲
(9)大ロンドン市の復活とロンドン市長の誕生
(10)ユーロ参加と分権主義戦略
第9章 集権主義戦略の動揺−権限移譲と野党保守党−
(1)権限移譲反対キャンペーン (2)スコットランドとウェールズにおける住民投票敗北
(3)スコットランド議会選挙とウェールズ議会選挙
(4)北アイルランド紛争と保守党
(5)北アイルランド和平プロセス
(6)イングランド諸地域に対する権限移譲への反対
(7)ロンドンをめぐる政策転換
(8)ユーロ参加と集権主義戦略
終章 ブレアの選択
(1)本書の議論の要約
(2)イギリスはユーロに参加するか?
(3)欧州連邦の中のイギリス連邦
あとがき
索引



関連書
力久昌幸著
『イギリスの選択』木鐸社,1996年
A5判・442頁・6000円(1996年)ISBN4-8332-2233-7
■欧州統合と政党政治
 欧州統合は戦後のヨーロッパにとって最も重要性を持つ問題であった。イギリスにとってもEC加盟は国家の命運を決する大事であり,国内の論議は長い間コンセンサスを欠いた。本書は,その原因について,政党システムのメカニズムとイデオロギーを中心に分析する。特に政党指導部の役割に注目しつつ考察した政治分析。


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◆〔アメリカ・ビジネス法12〕国際商取引法
  • 〔アメリカ・ビジネス法シリーズ 12〕
  • アメリカ国際商取引法
  • R・フォルソン,M・ゴードン,J・スパニョール編
  • アメリカ国際取引法 6版
  • 柏木昇・久保田隆訳
  • R.H.Folsom,M.Gordon,A.Spanogle,ed.International Business Transactions2000,6.ed
  • A5判・338頁・定価:本体5000円+税
  • 2003年6月30日発行
  • ラルフ・H・フォルソン(サンディエゴ大学教授)
  • マイケル・ウォレス・ゴードン(フロリダ大学教授)
  • ジョン・A・スパニョール(ジョージワシントン大学教授)
  • ISBN4-8332-2342-2 C3032
  • 柏木昇 福島県生れ,三菱商事,東京大学教授,を経て,現在中央大学教授
  • 久保田隆,東京都生れ,日本銀行を経て,現在名古屋大学助教授
 国際商取引に携わる人々や多国籍企業・政府関係機関への広範な入門書。荷為替売買と信用状の利用,通貨問題,技術移転,発展途上国と非市場経済国間の取引,国家主権免除,主権の対外行為の法理から近年の多様な電子商取引の利用などを解説。

目 次
第6版への序文
判例索引
イントロダクション:ブロックトンとバーバンクからバンコクと北京へ
第1章:国際商取引の交渉
第2章:国際物品取引
第3章:国際物品取引の資金調達―国際的な荷為替売買と荷為替信用状
第4章:金融と国際商取引
第5章:技術移転
第6章:市場経済国における国際商取引
第7章:非市場経済国と移行経済国における国際商取引
第8章:紛争解決:訴訟と仲裁
第9章 商取引おける国家主権免除
第10章 商取引における主権の対外行為の法理
結論


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◆〔アメリカ・ビジネス法13〕民事訴訟手続
  • 〔アメリカ・ビジネス法13〕
  • アメリカ民事訴訟手続
  • Civil Procedure 4th.ed.
  • メアリ・K・ケイン著
  • 石田裕敏訳
  • A5判・252頁・定価:本体4000円+税
  • ISBN4-8332-2343-0 C3032
  • 2003年8月6日発行
 初級者のための基礎的民事訴訟手続のカリキュラムとして,判決に達し,利用可能な上訴が尽されるまでの全過程を通じて,弁護士と訴訟当事者は適切な裁判所の選択およびケースの組み立てと開示の方法を学ぶ必要がある。本書はそれらの手続に沿って書かれた入門書。
目 次
原著者序

第1章 はじめに
第2章 適切な裁判所の選択
 A. 事物管轄権
 B. 裁判籍
 C. 人的管轄
 D. 原告の選択に対する異議
第3章  事実審理前:訴訟の組み立て
 A. 訴答
 B. 訴答の修正および補充
 C. 当事者と請求の併合
 D. 開示
 E. 事実審理前の協議
第4章 事実審理のない裁判
 A. サマリー判決
 B. 欠席判決
 C. 取り下げと非自発的却下
第5章 事実審理
 A. 手続
 B. 陪審審理
 C. 事実審理と事実審理後の申立
第6章 判決およびその効果
 A. 判決からの救済
 B. 判決の確保と強制
 C. 判決の拘束的効果
第7章 上訴
 A. 上訴する時期
 B. 上訴の力学
第8章 複数当事者、複数請求の特殊手続
 A. クラス・アクション
 B. 競合権利者確定手続
 C. 複数地区訴訟
第9章 連邦訴訟における他の特別の問題
 A. アクセスの障碍
 B. どの法が規律するか
翻訳者あとがき
 翻訳者のあとがき
   いろいろな経緯から,最終的に小生がこの本の翻訳を依頼された。仕事の依頼があるのは,光栄なことだと思って,深く考えずに承諾した。後になってから,自分がこのシリーズの訳者となることが何となく場違いなように思えたし,アメリカ合衆国の民事訴訟手続については,小生より造詣が深い適任の先生がおられるようにも思えた。それでも,この仕事を引き受けてよかったと思っている。怠け者の小生が怠けずに済んだし,アメリカの民事訴訟手続について全般的に勉強しなおすことができたからである。
 本書の英文と叙述は,このシリーズの趣旨にそくした簡潔,明瞭なものであった。ただ,きわだった特徴として,助動詞のmayが異例なほど多用されており,その代わりにcanがほとんど使われていない。不思議だなぁ,と思いながら読みすすめるうちに,次のような考えが浮かんだ。つまり,それは,ある手続に関する説明について「〜できる」(can)と言い切れないという著者の判断を反映しているということである。つまり,その箇所で説明している手続要件を充たしていても,目下のトッピックではないので直接触れられていない他の手続も同時にすべて充たしていなければ,canとは言えないということである。
 あるいは,mayは,州や地区によって手続が異なることを含意している場合もあるかもしれない。いずれにせよ,この語法は,そのままアメリカの民事訴訟手続の特色を表しているという感想をもった。はじめ一貫して頑固に「〜しうる」と訳していたが,日本語だけ読みかえしてみると,どうも読みづらいので,「〜できる」と訳した箇所が相当にある。したがって,読者の方々には「〜できる」と書かれてあっても,原文はmayかもしれないと思ってお読みいただきたい。

 この翻訳を読むことを通じて同時に法律英語に触れる機会をもってもらいたいと考え,原語を頻繁に挿入した。「判決」や「弁護士」などの素朴な単語まで,それに相当する英語を添えた。また,必要に応じて,間隔をおいて2度明示した原語もある。英米法の用語に精通しておられる方々には,まことに煩わしいかぎりであるが,そういう趣旨であるのでご理解いただきたい。訳語の選択にあたっては,田中英夫編集代表『英米法辞典』(1991年)にほとんど準拠したが,例外的にそれと異なる訳語を付けたものもある。例えば,collateral estoppel は,「争点効」と訳されるのが一般的であるが,本書では,collateral estoppel effectという表現が何度か使われており,「争点効の効力」では重言になるので,「副次的禁反言(の効力)」という原語に近い訳語をあてた。また,process(訴状,被告召喚令状,始審令状)という言葉は,「訴状」という訳語が選ばれることが多いが,本書では,complaint(訴状)と区別する必要があったので,「始審令状」という訳語を選択した。Merriam-Webster's Dictionary of Law (1996)のprocessの項目には,「民事訴訟手続では,被告に対する召喚状(summon)の送達(service)が憲法上充分なprocessであると考えられているが,通常,complaintの写しも提供されなければならない」とある。

 本書が出版されて以来(第4版,1996年),合衆国最高裁判所は,連邦民事訴訟規則(Federal Rules of Civil Procedure)を何度か改正してきた。また,2003年12月に発効が予定されている改正もある。これらの改正は,部分的なものであり,改正された条項は,本書では言及されていないか,言及されていても,その部分の解説が要約的な叙述をしているので,改正後の規定に関する説明としても依然として有効である場合がほとんどであったように思う(1998年と2000年の改正について若干の訳注を付けた)。裁判制度に関する合衆国議会の制定法(28 U.S.C.A…)については,本書が出版された直後に州籍相違ケースに対する訴額の要件が変更された(5万ドルが7万5千ドルになった)ことその他について,若干の訳注を付けた。

 小林秀雄が「翻訳」(『新訂小林秀雄全集』第8巻所収(1978年))という題の短い文章の中で,良い翻訳するには,原文を何度も読み返して完全に頭に入った後で,原文を見ずに自分の講義をするつもりで訳すのがよい,という趣旨のことを書いている。小生の拙訳は,とてもその境地に達していない。しかし,できるだけ原文に忠実に正確に訳しながら日本語として読みやすく訳すという最低限のマナーには注意したつもりである。拙訳が,少しでも多くの人々に何らかの形でお役に立てることを祈念する。



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◆『フーコーの穴:統計学と統治の現在』
  • 『フーコーの穴:統計学と統治の現在』
  • 重田園江(おもだ そのえ)著
  • A5判・300頁・定価:本体3000円+税
  • 2003年9月10日刊行
  • ISBN4-8332-2337-6 C3036
  • 1968年 西宮市生れ
  • 東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学
  • 明治大学政治経済学部助教授
  • 専攻 政治・社会思想史
  • イアン・ハッキング著『偶然を飼いならす』(共訳)2000年,木鐸社
 ケトレーに始まる統計学と確率の展開を近・現代国家による統治という視点から捉え,人間を正しく測ることの意味づけを行い,正常と異常,健康と病気,IQ(知能指数),犯罪者プロファイル,GISに及ぶ事例研究によって,脱福祉国家社会における統治と人間の自由の在り方を省察。

目次
第一章 フーコーの穴――方法論的序説
第一部
第二章 社会の統計学的一体性――エミール・デュルケム論
 はじめに
 1.統計学との関係
 2.医学・生理学との関係
 おわりに
第三章 断片化される社会―――ポスト福祉国家と保険
  はじめに
  1.社会的リスク
  2.社会に固有のリアリティ
  3.多様化した社会における連帯
  4.社会保険制度の理念
  5.ゴルトンと多様性の統計学
  6.リスクを細分化する社会
  7.リベラルな保険制度における「個人」
  おわりに
第四章 健康包囲網――高血圧の定義に見る統計
  はじめに
  1.病気とは何か 対立する二つの考え
  2.病気を統計的に定義する
  おわりに
第二部
第五章 正しく測るとはどういうことか―――知能多元論の起源と現在
はじめに
  1.何が「測りまちがい」なのか
  2.グールドの批判
  3.世紀末の思想風土
  4.ビネにとっての「知的能力」とは?
  5.現代における「測ること」と教育
  6.ビネのアクチュアリティ
  おわりに
第六章 正しく測るとはどういうことか? 再論
  はじめに
  1.福祉国家型の管理法(1)治療と教育
  2.福祉国家型の管理法(2)匿名化と平準化
  3.分断と排除
  4.行動の断片化
  5.多様性と尺度の非一元化
  おわりに
第七章 プロファイリングの現在―――断片化される「人間」
  はじめに
  1.プロファイリングのはじまり
  2.「FBI心理分析官」
  3.FBIの方法
  4.「演繹的」プロファイリング
  5.統計的プロファイリング (1)心理地図
  6.統計的プロファイリング (2)ファセット理論
  おわりに
第八章 GIS―――空間を掌握する
  はじめに
  1.個人のアイデンティティから空間内の配置へ
  2.GISの背景地図
  3.住所照合システム
  4.捜査支援システム「C‐PAT」
  5.地理プロファイリング
  6.居住地推定モデル (1)円仮説
  7.居住地推定モデル (2)地理的重心モデル
  8.居住地推定モデル (3)CGT
  おわりに
  第九章 未来予想図
あとがき
索引


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◆地域文化と人間
  • 地域文化と人間
  • 泉谷周三郎著
  • A5判・200頁・定価:本体2500円+税
    ISBN4-8332-2338-4 C1039
  • 2003年4月15日発行
  • 1936年,東京都生れ
  • 1966年,東京教育大学文学部大学院博士課程中退
  • 専攻,倫理学,イギリス近代思想
  • 『ヒューム』研究社出版,1996,『J・S・ミル研究』 (共著)1992
 ヨーロッパの自然・民族・歴史などをふまえ、欧米5カ国の国民文化に焦点をあてて,その国民的特質を探りながら,それらの国で今日多くの人々がどのような生活を送り,あるいは20世紀の課題(たとえば平和の維持,地球環境,男女のあり方など)にどのように取り組んでいるかを明らかにしたものである。それを通じて,わが国の今日のあり方を見直すきっかけをつかむ手がかりをなすべく書かれた。




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◆英国の立憲君主政

  • 英国の立憲君主政
  • The Monarchy and the Constitution, 1995 by Vernon Bogdanor
  • A5判・400頁・定価:本体5000円+税
    ISBN4-8332-2335-X C3022
  • 2003年6月3日発行
  • 笹川隆太郎・小室輝久・R・ハルバーシュタット訳
  • ヴァーノン・ボグダナー著
  • オックスフォード大学統治制度論教授
  • 笹川隆太郎,石巻専修大学教授
  • 小室輝久,明治大学法学部講師
  • R・ハルバーシュタット,石巻専修大学助教授
 本書は近代民主主義国家である英国にあって君主政はどのように機能しているのかという疑問に答えようとするもの。英国が持つ諸制度の中でも君主制は最も深く歴史に根ざした制度であり,この理解が最重要である。日本の天皇制を考える上でも大いに参考になろう。
目 次
日本語版へのまえがき
謝辞
まえがき
凡例
第1章 立憲君主政の発展
第2章 憲制の基本ルール・その1:王位継承
第3章 憲制の基本ルール・その2:影響力と大権
第4章 首相の任命
第5章 憲制の危機三例
第6章 絶対多数党不在議会と比例代表制
第7章 王室財政
第8章 国王の書記翰長
第9章 国王と教会
第10章 国王とコモンウェルス
第11章 立憲君主政の将来
付録
1.ヘンリ8世以降の国王
2.1782年以降の英国首相
3.1870年以降の国王書記翰長
4.1995年時点のコモンウェルス構成国
5.1900年以後の,国王権限の行使を含む,主要な憲制上の出来事
資料と参考文献撰
訳者あとがき
事項索引・人名索引


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日本語版へのまえがき
 私の著書 The Monarchy and the Constitution が日本語に訳されて出版されることをうれしく思っております。本書が,伝統的君主国から現代的立憲君主国に転換を遂げた日本で格別の興味をもって読まれることを願っております。日本の経験との類似点や比較対照すべき点が多く見つかることでしょう。日本の読者が,現代の状況のもとでは,立憲君主政は,民主政を蝕むのではなく,民主政を支えるのに役立っているのだという私の結論に賛成してくださるものと期待しております。
 本書は,英国で1995年に初版が刊行されました。従って,それ以降の展開については述べておりません。しかし,日本の読者は,2002年,英国で催されたエリザベス女王在位50周年の祝賀行事の成功を,もちろん,ご存じのことでしょう。この祝賀行事は,英国における君主政の伝統が極めて根強いものであることを示すと同時に,本書の中心的な主張を裏付けるものであると私は確信しております。

2002年7月
オックスフォード,ブレイズノーズ・カレッジにて
オックスフォード大学統治制度論教授
ヴァーノン・ボグダナー



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◆『各国の選挙―変遷と実状―』
  • 『各国の選挙―変遷と実状―』
  • 西平重喜著
  • A5判・584頁・定価:本体10000円+税
  • ISBN4-8332-2341-4 C3031
  • 2003年9月10日刊行
  • 1924年 東京生れ
  • 1947年 北海道帝国大学理学部数学科卒業
  • 1949-83年 統計数理研究所勤務(現在名誉所員)
  • 1968-94年 早稲田大学政経学部講師
  • 1975年 パリ第五(ルネ・デカルト)大学教授
  • 1983-94年 上智大学経済学部教授
 本書における選挙法は国民を直接代表する議員を選出する方法のことである。第T部では世界各国の選挙方法を横断的に捉え,各種の選挙法の定義・意味・問題点を整理し,第U部では国別に選挙法の変遷と実状,採用の理由・特徴・効果等をデータの分析から論理的に推理する方法で読み解く。30年に及ぶ研究成果。


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 目次
 はじめに
  第I部 選挙の方法
第1章 選挙の方法の基本事項
第2章 多数制
 第2.1章 小選挙区単純多数制,第2.2章 小選挙区絶対多数制
  第2.3章 大選挙区多数制
第3章 移譲制
第3.1章 小選挙区の移譲制,第3.2章 大選挙区移譲制
第4章 比例代表制
 第4.1章 比例代表制の分類,第4.2章 単純比例式と当選基数式,   第4.3章 割り算法,
 第4.4章 各配分法の問題点,意味,  第4.5章 全国での比例と地域での比例
第5章 混合制
第6章 比例代表制の提案
    第II部 各国の選挙法
第1章 イギリス [GBR]
第2章 フランス [FRA]
第3章 ドイツ [DEU]
第4章 イタリア [ITA]
第5章 中西部ヨーロッパ諸国
 第5.1章 ベルギー [BEL ],第5.2章 オランダ [NDL],
 第5.3章 スイス [CHE],第5.4章 リュクサンブール [LUX],第5.5章 オーストリア [AUS]
第6章 イベリア2国とギリシア
 第6.1章 スペイン [ESP],第6.2章 ポルトガル [PRT],第6.3章 ギリシア [GRC]
第7章 北ヨーロッパ諸国
 第7.1章スウェーデン [SWE], 第7.2章 ノルウェー [NOR],第7.3章 デンマーク[DNK],
 第7.4章 アイスランド [ISL],第7.5章 フィンランド [FIN]
第8章 その他の国
 第8.1章 ポーランド [POL],第8.2章 大韓民国 [KOR] ,第8.3章 日本 [JPN] ,
 第8.4章 ヨーロッパ連合 [EUR]
アイルランド
オーストラリア
ハンガリー
 あとがき
 参考文献
 索引


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◆『議会制度と日本政治−議事運営の計量政治学−』
  • 『議会制度と日本政治−議事運営の計量政治学−』
  • Agenda Power in the Japanese Diet
  • 増山幹高著(ますやま みきたか)
  • 1964年京都府生れ
  • 1989年慶応義塾大学法学部卒業
  • 2001年ミシガン大学Ph.D(政治学)取得
  • 現在 成蹊大学法学部教授
  • A5判・300頁・定価:本体4000円+税
  • ISBN4-8332-2339-2 C3031
  • 2003年9月24日刊行
 既存研究のように,理念的な議会観に基づく国会無能論やマイク・モチヅキに端を発する行動論的アプローチの限界を突破し,日本の民主主義の根幹が議院内閣制という制度に構造化されていることを再認識し,この議会制度という観点から戦後日本の政治・立法過程を体系的・計量的に展開する画期的試み。

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目次
一章 序論
 1 制度論と戦略性
 2 国会の機能と運営
 3 既存研究における問題点
 4 研究の目的と意義
 5 本書の構成
二章 国会研究における観察主義
 1 官僚支配論
 2 与野党協調論
 3 代理委任論
 4 観察主義の陥穽
三章 国会は全会一致的か?
 1 国会における立法手続き
 2 国会法規の再考
 3 議事運営の比較制度論
四章 議事運営の分析方法論
 1 議事運営権の理論
 2 分析概念としての「立法時間」
 3 議事運営権の制度的均衡
計量分析概論
 1 生存分析
 2 サンプル・セレクション
五章 議事運営による非決定
 1 セレクション・バイアス
 2 法案賛否の不均一分散
 3 議院内閣制における国会の機能
六章 議事運営と立法時間
 1 会期制による時間制約
 2 立法時間の推計
 3 立法時間の均一性
補足推計
七章 議事運営と立法的効率性
 1 委員会における議事運営権
 2 政権基盤の脆弱性と議事運営権
 3 議事運営の制度化
 4 議事運営と政党制
補足推計
八章 議事運営と行政的自律
 1 議事運営と行政裁量
 2 議事運営と行政組織
 3  政治優位における官僚主導
九章 政権流動期における議事運営
 1 流動期における肯定的議事運営権
 2 流動期における否定的議事運営権
 3 政権流動化の政策的帰結
 4 政権流動化と国会の機能
補足推計
十章 結論
 1 立法過程における行動と制度
 2 立法時間と議事運営権
 3 立法・行政関係と政権流動性
 4 国会研究における制度論的方向性

参考資料
 戦後国会における立法動向
 新憲法下の国政選挙
 変数の定義と基礎統計(法案支持確率)
 変数の定義と基礎統計(立法危険率)
 厚生省部局再編前後の関連法案一覧
参考文献
あとがき
索引
英文要旨


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◆『理論とテクノロジーに裏付けられた新しい選挙制度』
  • 『理論とテクノロジーに裏付けられた新しい選挙制度』
  • 松本保美(まつもとやすみ)著
  • 1948年生れ
  • 1972年 早稲田大学政経学部卒業
  • 1974年 同大学院経済研究科修士課程修了
  • 1982年 オックスフォード大学Ph.D取得(数理経済学)
  • 現在 早稲田大学政経学部教授
  • 46判・200頁・定価:本体2000円+税
  • 2003年10月2日刊行
 投票に関して,既に明らかになった理論的な結論を紹介することによって,現在の投票制度が如何に奇妙なものとなっているかを指摘・分析するとともに,それにとって代わる投票制度を推奨し,同時に,その実現可能性をコンピュータ・ネットワーク技術の面から検討する。最後に大胆なアイディアを提示して,議論の叩き台とする。



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目次
まえがき
序章 現行選挙制度と本書における分析の視点
1.選挙制度は投票方式が命
 1.1 問題の多い現在の投票方式
  1.1.1 何故一人1票?
  1.1.2 1票の重さの不平等
  1.1.3 投票率の低下
  1.1.4 投票結果の信憑性
1.2 多数決の奇妙な結論
  1.2.1 投票の逆理
  1.2.2 総得点方式
 1.3 票の集計方法いろいろ
 1.4 選挙制度改革の狙い
  1.4.1 難しい1票の格差是正
  1.4.2 投票率低下をどう防ぐか
  1.4.3 チェックされない当選者の正統性
  1.4.4 将来の選挙制度
 1.5 「平等」をどう考えるか
  1.5.1 比例的平等と無差別的平等
  1.5.2 アローの一般可能性定理
  1.5.3 平等観の理想と現実

2. 理想的な投票方式を求めて
 2.1 首尾一貫した単純多数決の種類
  2.1.1 二分型投票方式
  2.1.2 エコー型投票方式
  2.1.3 敵対型投票方式
  2.1.4 単峰型投票方式
  2.1.5 単谷型投票方式
  2.1.6 二グループ分離型投票方式
  2.1.7 タブー型投票方式
  2.1.8 理論的かつ実際的な投票方式
 2.2 使える投票方式
  2.2.1 二分型投票方式と自由な投票
  2.2.2 投票権に対する考え方:現行投票方式と二分型投票方式
  2.2.3 単峰型投票方式と投票行動
 2.3 補論:複数投票権と投票結果の論理的整合性
  2.3.1 順位付け投票で当選者を決定できない確率
  2.3.2 コンドルセ基準による多数決勝者を保証する投票数

3. 本当の当選者は誰?
 3.1 民主主義と選挙制度
  3.1.1 比例代表制と多数代表制
  3.1.2 二分型投票方式:論理的整合性と実用性
 3.2 失意の投票者
 3.3 一人1票方式と一人複数票方式
 3.4 候補者の二項比較
 3.5 実例に見る集計結果の奇妙な結論
  3.5.1 投票の逆理
  3.5.2 単峰型投票方式
  3.5.3 泡沫候補の影響力:単峰型投票方式の場合
 3.6 二分型投票方式の適用
  3.6.1 投票行動の想定
  3.6.2 あなどれない泡沫候補の存在
  3.6.3 検証:当選者の正統性
 3.7 二分型投票方式の薦め

4. 小選挙区制はどの程度民意を代表するか
 4.1 激戦区
  4.1.1 当選者の得票率が低い選挙区
  4.1.2 候補者乱立の選挙区
   a) ケース1
   b) ケース2
 4.2 圧勝区
 4.3 まとめ:二分型投票からみた小選挙区制

5. 選挙は自宅で
 5.1 電子投票化への動き
 5.2 コンピュータ・ネットワーク社会
 5.3 電子投票の現状と問題点
 5.4 IT技術の現状
  5.4.1 テレビ・電話は一人1台時代
  5.4.2 一体化するテレビとパソコン
  5.4.3 余裕のある回線能力
 5.5 在宅投票システム
  5.5.1 現在の投票システムとの比較
    a) 在宅投票システムのメリット
     @ 投票率の向上
     A コストの大幅削減
    b) 在宅投票システムの問題点
  5.5.2 すぐにも可能な在宅投票システム
    a) 回線負荷
    b) ホスト・コンピュータの処理能力と分散型システム
 5.6 在宅投票システムの先に見えてくるもの
 5.7 在宅投票システムの運用上の問題点と対策
 5.8 在宅投票システム実現に向けて

6.究極の選挙制度
 6.1 選挙は機械的に処理すべき
  6.1.1 有権者の投票行動
  6.1.2 自治体の投票集計作業
  6.1.3 ソフトウェアで格差是正
 6.2 自律的選挙制度の特徴と課題
  6.2.1 在宅投票システムの特徴と課題
   a) システム構築と公職選挙法改正
   b) システムの操作性
   c) 行政サービスとシステムの汎用性
   d) 投票端末の開発と普及
   e) 在宅投票システムの普及のために
  6.2.2 二分型投票方式の特徴と課題
 6.3 まとめ:定数変動型選挙制度の薦め

おわりに
参考文献
索引


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◆『国民主権と民族自決―第一次大戦中の言説の変化とフランス―』
  • 『国民主権と民族自決』
  • 唐渡晃弘(からと てるひろ)著
  • 1962年 大阪市生れ
  • 1986年 京都大学法学部卒業
  •  京都大学法学部助手を経て
  • 現在 京都大学大学院法学研究科助教授
  • ISBN4-8332-2340-6 C3022
  • A5判・330頁・本体5000円+税
  • 2003年10月30日刊行
■第一次大戦中の言説の変化とフランス
 第一次大戦後,ヨーロッパ大陸には多くの国民国家が「民族自決」原則の下に誕生した。戦後処理と秩序の構築に当った戦勝諸国の各リーダーは「国民」や「民族」をどのように理解していたか,また独立を勝ち取った指導者や敗戦諸国はこれにどう対応したのか,これらに焦点を当て,パリ講和会議の政治過程をフランスの立場を中心に一次史料を踏まえ,活写する。グローバル化により,「民族」,「マイノリティ」,「言語」,「宗教」,「貧困」をめぐり,国民国家のあり方は新たな段階に突入したが,今なお解決の道を見出せない難問に示唆を与える野心作。

目次
はしがき
第一章 国民国家概念の変遷
第一節 国民主権の誕生
 1.国民の起源の探究
 2.フランス革命と国民主権
第二節 国民をめぐる言説の変化
 1.新国家形成を目指す「民族」概念
 2.国家による「国民の創出」
第二章 民族問題とフランス外交
第一節 フランスと中東欧の民族問題
 1.一九世紀のフランスとポーランド
 2.第一次大戦の開始とポーランド
 3.オーストリア=ハンガリー二重帝国と諸民族
第二節 戦況の変化と複雑なフランス外交
 1.三月革命の影響
 2.チェコスロヴァキア独立運動への対応
 3.ポーランド問題への対応
第三章 民族自決原則とその影響
第一節 ウイルソンと新しい理念
 1.ウイルソンと理想主義外交
 2.ウイルソンとボルシェヴィキ
  3.「民族自決」原則
第二節 諸民族の主張とフランスの対応
 1.ブレスト=リトフスク条約の影響
 2.ポーランド人指導者の主張
 3.チェコスロヴァキア人たちの活動
第三節 休戦と民族問題
 1.諸民族に対するフランスの曖昧な政策
 2.戦勝諸国間の関係
 3.休戦とポーランドの領域問題
第四章 講和会議の諸決定
第一節 民族自決原則のフランス領への影響
 1.アルザス・ロレーヌ問題
 2.フランスの不安感とライン左岸の領土問題
第二節 講和会議によるポーランド国境の決定
 1.ポーランドの海へのアクセス
 2.上部(高地)シレジアの帰属問題
第三節 講和会議の限界
 1.ガリツィアをめぐる戦い
 2.ロシアとの国境画定
 3.チェコスロヴァキアの国境問題
  第五章 マイノリティの保護と民族自決
 1.歴史的背景とユダヤ人問題
 2.講和会議の決定
 3.保護条約の影響
第六章 講和会議と「民族自決」
 1.フランスと「民族自決」
 2.新たな言説の確立へ
 3.民族自決言説の影響
 あとがき
 索引


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 はしがき
 ナショナリズムやナショナリストということばは、私が学生のときにもよく議論に使われたが、それはえも言われぬおどろおどろしいニュアンスをたたえたことばであり、多くの場合は、他者を批判するのに有効な武器となるという作用を持っていた。しかし、そのことばが意味する内容が明らかにされることはなく、あるときはナチズムと同義として、あるときは「侵略的」と形容される外交政策を指すことばとして、またあるときはマキャベリズムの代替として、といった具合にさまざまな概念と結びついて使われていたように思う。

 これらは押しなべて「負」のイメージを持って用いられていたけれども、植民地独立の話になると、とたんに同じことばが、何か輝かしい正義を意味するものとして使われる場面に何度も遭遇して、大いに面食らったことを覚えている。その後、独立国家となるまでのナショナリズム(ナショナリスト)は「善」であるが、独立したとたんに「悪」となる、といったあまりに単純化された二分法の説明に直面するに至って、ナショナリズムの問題は、私にとって一種のエニグマとなった。

 さらに、「国民」の概念を勉強しても、この問題をとりまく霧は、一向に晴れることはなかったし、ナショナリズムに関する著作を読むことがあっても、謎が解明されることはなかった。そして、この問題を自身の研究テーマにすることもなく、ずっとエニグマが残ったままであった。ところが、思わぬところから、私はこのエニグマと直面することになった。

 それは、一九九一年九月からフランスで在外研究をする機会をいただいたことである。この年には、湾岸戦争があったけれども、それはまだ例外的な問題であるという雰囲気が強く、世界全体はソ連をはじめとする共産主義諸国の崩壊を受けて束の間の幸福感(ユーフォリア)に浸っていたときであった。『歴史の終わり』というフランシス・フクヤマの著書こそまだ出版されていなかったが、彼が八九年七月に米国平和研究所で行った同じタイトルの講演の要旨がすでに出版されており、反響を呼んでいたときであった。はたして彼の主張どおり、歴史は直線的に進歩するのだろうか、と疑問を抱きつつもヨーロッパに向かったが、振り返ってみれば、私にとってはまさにこのときがエポックメーキングな転機であった。

 まず、当時の西欧は、日米をとりまいていたような雰囲気にはなかった。九一年のパリは、東欧からの難民が押し寄せるという事態には見舞われていなかったが、それよりもずっと重大な問題として、ユーゴスラヴィア連邦の崩壊に伴う内戦が始まっていたからである。しかもそれは、瞬く間に旧ユーゴスラヴィア全土に広がった。たしかに、バルト三国が独立を勝ち取ったときのように、その過程においては、戦闘が勃発したときがあった。しかし旧ユーゴスラヴィアで勃発し継続していた戦闘は、より長期に、より陰惨に、より過激に展開され、出口の見えない状態になっていった。二〇世紀も終わりを迎えようとするときに、まさかヨーロッパにおいて、民族浄化がじっさいに行われることを予想していた人たちがどれだけいたであろうか。さらに、この紛争はそれが勃発した場所と、関係していた国、セルビア、という一致によって、私は一世紀前の亡霊が復活したのかという印象を覚えた。

 さらに九三年年頭には、まったく平和的な手続きによってではあったが、チェコとスロヴァキアが分離し独立国家となった。四分の三世紀続いたチェコスロヴァキアは、はたして多民族国家だったのであろうか。また、個人的なレベルにおいては、トランシルヴァニアの領有問題について熱っぽく語り、トリアノン条約への恨みを述べたるハンガリー出身の若者がいるかと思うと、プラハ出身のビジネスマンが、ハプスブルク帝国の時代であったならば、より大きな市場があったのに,と悔しがったりしている姿に触れる機会があった。これらの経験を通じて、共産主義というひとつのイデオロギーの重石が取れたことによって、少なくともヨーロッパにおいては、イデオロギーが半世紀の間閉じ込めて来た、ネーションをめぐるパンドラの匣が再び開いたのではないかと、一抹の不安感とともに考えるようになった。

 他方では、すでに一〇年以上前に出版されたフランソワ・フュレの『フランス革命を考える』の衝撃による騒動が一段落し、彼も若干主張を変化させていたが、かつての「正統大革命史学」に挑戦するような著作が次々と刊行されていた。これらの著作は、私に、いわゆる「国民国家」について考え直すきっかけを与えてくれた。しかも八〇年代には、ホブズボームがその著書の序文に書いているように、ネーションやナショナリズムに関する研究が次々と刊行されたときでもあった。

 こうしたことが重なり、いわゆる国民国家が、いっときに、かつ数多く形成され、国際社会により承認された第一次大戦の終結過程に興味を抱くようになり、日本を出発したときに考えていた研究テーマを修正することにした。しかし、戦争にせよ、講和会議にせよ、多くの国が関係しており、そのすべての国の一次史料を検討することなどとてもできないことは明らかであったし、私は新興諸国の言語はひとつとして理解できないという問題があった。それでもあえてこのテーマにとりかかろうと思ったのは、上記のような経緯があったからである。

 そこで、多数の国民国家形成を認めて戦後秩序を構築した戦勝諸国の指導者たちは、国民や民族についてどのように理解していたのであろうか。さらに独立国家形成を勝ち取った指導者たちや敗戦諸国はそれにどのように対応したのか。このような側面に焦点を当てながら、フランスの立場を中心に、大戦の終結過程を研究することによって、nationをめぐる言説がいかに展開されたかということを整理し、検討してみようとすることが本書のテーマである。したがって、特にこの時代においては、多くの場合、地名や人名について複数の呼び方がありえたけれども,戦勝諸国の政治家たちが用いていた呼称を使用している。このような態度は「オリエンタリズム」の最たるものであろうが、戦勝諸国が勝者・強者として作り上げようとしたことと、その影響を考察することにこそ本書の焦点があるからである。また、「ナショナリズム」ということばは、きわめて多義的に用いられているため、引用部分を除いて、できるだけこのことばを使わずに、検討を進めることを心がけたつもりである。

 本書の刊行にあたって、京都大学法学部百周年記念基金の助成をいただいた。京都大学法学部の百有余年の蓄積に、いささかなりとも貢献ができたかどうか、まことに心もとない限りであるが、今後の精進を誓うとともに、感謝の意を記しておきたい。
 


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◆『将軍ワシントン―アメリカにおけるシヴィリアン・コントロールの伝統』
  • 『将軍ワシントン―アメリカにおけるシヴィリアン・コントロールの伝統』
  • George Washington and the American Military Tradition
  • ドン・ヒギンボウサム(Don Higginbotham)著
  • 1931年生れ
  • 現在ノースカロライナ大学チャペルヒル校歴史学部教授
  • 和田光弘(わだ みつひろ)
  • 1961年生まれ。現在名古屋大学大学院文学研究科助教授
  • 森脇由美子(もりわき ゆみこ)
  • 1963年生まれ。現在三重大学人文学部助教授
  • 森 丈夫(もり たけお)
  • 1969年生まれ。現在福岡大学人文学部専任講師
  • 望月秀人(もちづき ひでと)
  • 1973年生まれ。現在名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程
  • ISBN4-8332-2345-7 C1023
  • A5判・200頁・本体価格2500円+税
  • 2003年10月30日刊行
■アメリカにおけるシヴィリアン・コントロールの伝統
 米国初代大統領として馴染み深いジョージ・ワシントンが大陸会議によって正規軍総司令官に任命され,イギリス軍と正面から対峙しつつ,大陸各地を転戦し,独立を確実なものとする過程でシヴィリアン・コントロールの伝統が如何に生まれ,継承されてきたかを彼の評伝によって簡潔に描く。著者は独立革命期の軍事史,ワシントン研究の専門家・権威




  目次
  日本語版への序
  序
  はしがき
  第1章 植民地時代の伝統
  第2章 過渡期の伝統
  第3章 独立革命期の伝統
  第4章 ジョージ・ワシントンとジョージ・マーシャル
  訳者後書き
  用語解説



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日本語版への序
 ジョージ・ワシントンとアメリカの民軍関係を論じた拙著を,このたび日本の読者の皆様にお読みいただく機会を得て,大変光栄に存じます。この民軍関係という点に関して,日米両国は非常に異なる伝統を育んできました。わが国ではジョージ・ワシントンらアメリカ独立革命の指導者たちが,母国イギリスの経験や思想を取り入れるとともに,独立戦争自体からも多くのことを学びました。1787年に制定された合衆国憲法は,しばしば政治的かつ軍事的な文書といわれますが,そこには文民統制の原則が明記されております。独立戦争中,ワシントンが常に大陸会議を上位の権威として尊重したがゆえに,かかる原則を憲法に明示することが容易となったのです。大陸会議は彼を総司令官に任命し,彼もまた大陸会議に対して忠誠を尽くしました。さらに彼は,自らの軍隊の宿営や戦闘の場となった各邦(ステイト)においても,その文民の権威に対して敬意をもって接したのです。

 このような民軍関係の伝統に歴代の将軍たちが忠実であり続けたからこそ,われわれアメリカ人は,軍事を社会から切り離して捉えようとはしなかったのです。元将軍たちを大統領に選ぶことをためらわないのも,同じ理由によるものです。じじつ,2004年の大統領選にもまた一人,華々しい軍歴を持つ将軍ウェズリー・クラークが名乗りをあげており,その証左ということができましょう。

    2003年10月 ノースカロライナ州チャペルヒルにて




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◆『近代化と国民統合―イギリス政治の伝統と改革―』
  • 『近代化と国民統合―イギリス政治の伝統と改革―』
  • 清滝仁志(きよたき ひとし)
  • 1966年北九州市生れ
  • 1997年九州大学大学院法学研究科博士課程修了
  • 1999-2002年日本学術振興会特別研究員
  • 現在 駒沢大学法学部助教授
  • 「政治思想家としてのジョン・ミルトン」『17世紀英文学のポリティクス』所収他
  • A5判300頁5000円
  • ISBN4-8332-2346-5 C3022
  • 12月20日発行
■イギリス政治の伝統と改革
 アリストクラシーに基づく〈旧体制〉が1832年の改革を契機に近代的国家体制に移り変わるイギリスの政治社会をデモクラシーと国家統合をめぐる〈知の支配〉の闘争という観点から捉え,アーノルド父子,R・ロウ,カーライル,バジョット,H・セシル,W・テンプルらの思索と提言を,産業化,国教会問題,教育改革等のテーマに即して検討・考察する。


     目次
  問題の所在
第一章
  「旧体制」の危機−トマス・アーノルドにおける教会と国民統合―
第一節 トマス・アーノルドと国民統合
第二節 アイルランド・カトリック問題とプロテスタント国教制
第三節 包括的国教会の建設
第二章
  デモクラシーと教育―トマス・アーノルドにおける教育と国民統合―
第一節 <知の支配>をめぐる論争
第二節 歴史家トマス・アーノルドの改革論
第三節 教育による精神的支配
第三章
   文明とデモクラシー―マシュー・アーノルドにおけるデモクラシーと教養―
第一節 マシューにおけるデモクラシーの位置
第二節 イギリスにおけるデモクラシー
第三節 「ミル主義」批判
第四節 「マイアル主義」批判
第五節 マシューにおける政治
第四章
   マシュー・アーノルドの教育論争―ロバート・ロウの教育改革をめぐって―
第一節 近代国家と制度改革
第二節 ロバート・ロウによる改正教育令
第三節 マシュー・アーノルドによる改正教育令批判
第五章
  理想的国家体制の復活―カーライルにおける統治と勤労倫理―
第一節 カーライルとその時代
第二節 『フランス革命史』における歴史観
第三節 カーライルと『チャーティズム』
第四節 カーライルにおける勤労倫理
第五節 カーライルの同時代的意義
第六章
  伝統的国民統合の再解釈―ウォルター・バジョットとイギリス国家体制―
第一節 バジョットと伝統的国家体制像
第二節 神秘的でない伝統的国家体制
第三節 デモクラシーとリーダーシップ
第四節 バジョットの政治思想の持つ意味
第七章
  国教会・保守主義・福祉国家
第一節 ヒュー・セシルの『保守主義』と国教会
第二節 福祉国家と国教会共同体―ウィリアム・テンプルの国教会論―
  おわりに
  索引



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